墓じまいについて

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現在の墓事情

先日、墓参りに行ったのですが、私の家の墓の隣が空き地になっていました。おそらく、墓じまいをしたのでしょう。少子化かつ結婚しない人が増える時代において、日本の墓文化の中心となっていた家族墓のあり方が、変わろうとしています。

これまでの墓は、「◯◯家之墓」という縦長直方体のものが主流でした。私の墓のあるお寺は、敷地の問題から、この型の墓が、隙間なくびっしりと並んでいます。

現代の墓は、洋風といいますか、横長の型が主流です。墓の売上高の約3分の2が洋風だそうです。また、文字は「絆」「永遠」「ありがとう」などといったものが多く、家の観念が薄らいでいます。中には、グランドピアノ、ゴルフボールといった趣味や特技にこだわった墓も見受けられます。

そして、家という文字入れを避けるという風潮は、奥さんが旦那さんの家の墓に入ることを頑なに拒むという流れにも繋がっています。「熟年離婚」という言葉を耳にしますが、墓は別々に入るという「死後離婚」に至ることになっているようです。

さらに、お寺を見回すと、夫婦両家の「合葬墓」、女性専用の墓「女性墓」、仲のいい友達どうしで入る「墓友墓」、また愛したペットと共に入る「ペット墓」など、社会のありようの変化にともない、多種多様な墓が見受けられます。

一方で、人の手入れがなされていない墓も目立ちます。想像ですが、子孫がいない人が突然孤独死してしまい、無縁墓と化してしまったのではないでしょうか。お寺には、長年会費が未納のため、強制的に墓じまいする警告文書が掲載されています。「墓地、埋葬等に関する法律」によると、官報の掲載と墓地での公告によって、最短1年で無縁墓を撤去できるようになっていますが、お寺は慈悲深いので、数年は強制処分はしないでしょう。墓の整理にはかなりの年月がかかってしまいます。

ともかく、現代の日本が直面している家への帰属意識が薄らぎや個人主義の尊重によって、今後は家族墓が減少していくことは、間違いないでしょう。

やがて訪れる無縁化

社会の変化に伴って出現した合葬墓、墓友墓、ペット墓など、いずれにしても祭祀継承者がいなければ、やがては無縁化します。最近、みかける納骨堂形式の墓は、管理が楽ですが、賃貸料が滞れば、その時点で退去させられます。祭祀継承者がいない中、どう始末されてしまうのでしょうか。気になるところです。

どうせ無縁仏になるのであれば、海や野山に散骨してほしいという人もいます。それでも、むやみやたらに散骨はできませんし、それなりに費用がかさみます。

そもそも、骨が残るから問題なのだ、いっそのこと火葬の際にすべて焼き切って、骨が残らないよう灰にしてほしいと思う人もいます。地域特性や施設管理の観点から、場所によって対応がまちまちであるようです。

墓だけ片付ければいいのではない

墓じまいは、墓を処分すれば済む話ではありません。お寺には、先祖代々の履歴を記した過去帳があります。墓石にも記載がありますが、大抵は戒名と死亡年月日程度です。一方、過去帳には、俗名、属柄、享年のほかに、死因(病死、死罪などの記載がある)や差別の有無といった繊細な個人情報まで記載されていることもあります。これでは、いくら亡くなった人の事柄とはいえ、先祖の情報が漏れてしまうと、現世を生きる人たちに多大な影響を及ぼしかねません。

個人情報保護法は、故人の情報も保護対象となっているため、寺院は容易には情報を開示しません。墓じまいする際に、その情報を処分できるのか、過去帳を抹消できるのかという、厄介な問題が潜んでいるのです。

墓じまいをご自身でなさる方、または代行業者に頼む方などさまざまですが、なんとも骨の折れる作業だと思うところです。

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