国分寺崖線一帯におけるPFAS発見の問題

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PFASとは

PFASは、有機フッ素化合物(Per- and polyfluoroalkyl substances)のことで、この世の中に数千種類存在するといわれています。デュポン社のテフロン加工フライパン、3M社の水や汚れをはじくスコッチガードなど身の回りでも多く使用されるほか、半導体の製造などにも必須の物質です。

PFASは分解されずに環境中に長期間残留するため、「永遠の化学物質」と呼ばれるようになりました。メーカー内ではその有害性が認識されていたものの、外部には公表されませんでした。

PFAS規制の経緯

PFASの有害性が広く認識されるようになったきっかけは、2000年頃からアメリカで相次いだ訴訟でした。工場から川に流出したPFASによって住民が健康被害を受けた、あるいは水源が汚染された、といった訴訟でメーカーが巨額の支払いで和解するケースも起きました。こうした流れを受けて、世界中でPFASの規制が進んでいったのです。

同時に疫学調査や科学的な研究も進みました。数多くあるPFASのうち、泡消火剤などに使われてきたPFOSと、フッ素樹脂の加工などに使われたPFOA、さらにこれらの代替品として使われてきたPFHxSと呼ばれるものは、国際条約で順次規制されてきました。日本でも法律で製造・輸入などを原則禁止にしてきました。

2009年1月米国水道水の暫定警告勧告値
PFOS=200ng/l
2016年5月米国水道水の生涯健康勧告値を設定
PFOS+PFOA=70ng/l
2020年4月日本水道水の暫定目標値を設定
PFOS+PFOA=50ng/l
2022年5月欧州EU全域で、PFASを含んだ泡消火剤の使用禁止
2022年12月米国素材メーカー3Mが、2025年度末までに全製品でPFAS使用を取りやめる取り組みを発表
2023年3月米国生涯健康勧告値案を設定
PFOS=4ng/l、PFOA=4ng/l
ng/l=1リットルあたりのナノグラム数

日本の動きが慎重な理由

欧米に比べて、日本のPFAS規制の動きには慎重さが見られます。

そもそも、PFASは有害なのか、まだはっきりと分かっていないからです。

一方、内閣府の食品安全委員会は、6月にPFASに関する初の報告書を発表しました。それによると、

  • 出生時の体重低下やワクチン接種後の抗体低下との関連は「否定できない」とした
  • 健康影響に関する知見はまだ少ない
  • 発がん性については「証拠は限定的」とした
  • 水道の暫定目標値(50ナノグラム)は、見直す方向で進める

日本の水道は

厚生労働省が発表している令和3年度の水道統計によると、1,247の測定地点中、目標値の50ナノグラムを超えた地点は2か所でした。

もっとも、水道統計の調査対象は給水人口が5000人超の規模の大きい水道事業に限定されています。水道の暫定目標値見直しに向けて、調査対象を小規模な簡易水道や専用水道にも広げて実施することになりました。国土交通省によると、5000人以下の簡易水道は約2380か所、社宅などの専用水道は約8170か所に上るので、対象数は約1万2000か所に増えることになります。

横田基地からのPFAS汚染

2023年1月、米軍横田基地のショッピングモール内の消火用スプリンクラー設備が破損して、PFASを含む泡消火剤の汚染水760リットルが漏出するという事故が起きました。

側溝から施設外に汚染水が流れ出したところを、福生市は流れ出ないよう食い止めたとのことですが、水は地面に浸透し、地下水として流れ出ていくことから、この食い止めにどの程度の効果があるかはわかりかねるところです。

この汚染水のPFAS濃度を調べたところ、PFOSとPFOAの合計値で、最も高くて1リットル当たり264万ナノグラムで、地下水や河川の国内の暫定指針値の5万3000倍でした。

横田基地での泡消火剤漏出事故は、過去にも数回起きています。米国内での規制を受けて、2020年以降はPFASを含まない代替品が使われているとされていますが、2023年1月の事故においても、依然として高濃度の汚染であったのです。

国分寺崖線のPFAS汚染

環境省が公表した令和4年度の自治体による河川や地下水などのPFASの調査結果をもとに、都道府県に取材した結果を反映させた全国地図をNHKが公表しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/tokushu/20240612/pfasmap/#9.87/35.5436/139.6184

この地図によると、多摩川沿い、府中崖線と国分寺崖線沿いに汚染が進んでいることが分かります。基準値を超えているのは、すべて地下水の調査結果です。中には、有名な湧水地もあります。

多摩川の上流に位置するほど、汚染の程度が高く、河口に近づくほど低くなります。

一方、横田基地のある福生市は、基準値を超えていません。前述の横田基地でのPFAS汚染との因果関係は、はっきりと分かりません。

いずれにせよ、流域の人々は、この問題に注意する必要があります。

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